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Magic

「Magic最終話」キュヒョン×イトゥク(本館と同一)

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イトゥクはそうして、俺を振った。

頼るものがなくなった重い体で、今日も念入りな女装をしているのだろうか。

ーー今から約20年前。

「フェルマーの最終定理」が証明された。

世界で一番難しいとされた数論は、360年間、無数の数学者の頭を悩ませてきた。

数学は、証明だ。

必要なのは矛盾のない、完全なる証明。

それが無ければ難問には立ち向かえない。

けれど長い間に、命を落とした者もいれば……立ち向かうことを諦めた人間もいるだろう。

俺は大学内のベンチに座って、ぼんやりと考えていた。


「提出、終わった?」


「終わったよ。お前は?」


言いながら隣に向いた。ダウンジャケットの襟を寄せて親友が座っていた。俺より長い脚がベンチの高さと合っていない。


「終わった。俺のとこは修正ほぼないから。これからバイト」


どうりで、茶色に染められた髪が良い感じに仕上がっている。


「そう」


と、言ってすかさず、チャレンジする。


「それで、お前はチョコあげたの?」


「あげてない」


俺、男だから、とかそういうことも言わないし、もう良いんじゃないのかなと思ったけど、親友はダウンの首元を掴んだまま、前屈みになって暫く黙ったから、俺も何も言わなかった。


「……キュヒョン。その人、諦めるわけ?」


同じ体勢で親友が呟く。

ぐしゃぐしゃの長い髪で、悲しい目をした人が、あれから俺の頭にはエンドレスで再生されている。


「……盛大に振られたし」


「ふーん。男だから?」


何となく面白く無さげに言われた。


「いや、男でも女でも関係ないらしいけど」


「あと一週間です」


俺はもう一方の隣に向いた。黒いコートの後輩が険しい顔をして、前屈みになって座っていた。チャンミンと同じく長い脚が、ベンチに合っていない。


「……何が?」


聞いた俺の背中で、チャンミンが「ホワイトデーか?」と言った。ホワイトデーは二日あとだけど。


「受験ですよ」


驚いたように、こちらに向いてミノが言う。
俺もチャンミンも黙ってから、


「そう……」


と少しして、俺が答えた。もう聞いても無駄だと思った。モデルみたいな後輩がまた正面を向いて、


「受かるのは分かってるんです。問題は、そこからどの位たてばいいかってことなんですよ」


と親指を噛んだ。何かとても重大なことが受験に関係しているらしいけど、普段の爽やかさからは、想像できないまがまがしいものを感じた。


「だけど」


そう言った俺を、両側の二人が見た。


「俺は、その魔法を解こうと思ってるよ」


と続けて、自分も前屈みになった。


「だけどの前は、何だよ?」


大きく可愛い目で親友が怪訝に見て来る。でも、その目よりもっと可愛く見える目を俺は知っている。
後輩は、「すいません、話が見えないです」と困惑したまなざしを向けてきた。

こいつらに、全然言われたくなかった。

けど、続けた。


「諦められないから、そうすることにした」


あの振られた日に俺は、計算をした。これはとても簡単だったから、結果も思っていた通りだった。
今までしなかったのは、もともとそこまで上昇志向じゃないし、苦難な道になることが分かっていたからだ。
だけど今の俺には、こうする以外なかった。やっぱり、イトゥクを忘れると言う選択は出来なかったから。
その為にも、今日俺はここに来ていた。相談と調べものをしに。
俺の言葉に、また全員黙った。
きっと考えていた。

……解かれる間に、命を落とした者もいれば、諦めた人間もいるだろう。

けれど、挑み続けた人間にしか、答えは手に入れられない。

世界一と言われた難問は、三世紀半の時を経て、解決された。

挑み続ければ、解けないものなんて、この世界には存在しない。

それが例え、魔法であっても。

それに、あのバレンタインから、俺とイトゥクが会って来たのは魔法なんかじゃないから。


――9日後。


俺は朝の眩しい日差しの中、イトゥクの部屋の前に立っていた。
ここまで来れて良かったと心底思った。厳重だったら、外で待たないといけなかったし。
親友も後輩もついて来なかったし。
腕時計の時間を見ながら、目の前のドアが開くのを待った。
大体予想時刻に、それは開いた。
緊張で俺は息を吐いた。長いダウンコートの前を開いているから寒いのもあった。
そして、コートを羽織った背広姿のイトゥクが現れた。
俺の姿に目を見開いている。
スーツを着たイトゥクは思っていた以上にイケメンだった。


「お前……」


「おはようございます。これ、ホワイトデーだから」


そう言って、用意していたクッキーの小さな紙袋を、俺は、マニキュアで赤く爪が塗られた手で渡した。イトゥクは、放心状態で、そのまま受け取った。


「何やってんだよ」


「これなら、会ってくれるって言ってたし」


自分に言い聞かせるみたいに、数回小さく頷いた。心臓がやばい。黒く長い髪が、自分の顏の両脇でなびく。
クッキーを靴入れの棚の上に置いて、イトゥクが俺を上から下まで、不審に素早く見て、


「冗談で言ったんだよ。帰れ」


と言って、玄関を出た。


「もう来るな」


俺の横をすり抜ける。手に持っているビジネスバッグは勿論男物だ。悲しくてへこたれそうになるけど、ここで終わらせられない。到着していたエレベーターに一緒に乗り込む。


「俺の話聞いて下さい」


「聞かない」


この靴のせいで、さらに見下ろすことになったイトゥクが俺に目もくれずに腕時計を見る。一階にすぐ到着する。


「じゃあな」


言い捨てて、髪の色に似た茶色のコートの背を俺に向けて歩き出した。そのむこうでゴミ出しをしている中年女性が、俺を見て口を開けている。


「こんなもんじゃ軽くなんかならない!」


俺は、眩しい朝っぱらの住宅街の一角で、親友が用意した丈の短いピンクのワンピースとハイヒールと、後輩が用意したウェーブのかかった長く重苦しい髪のかつらをつけて、彼等に笑いながらされた化粧をして、買って来たストッキングを履いた女装姿で仁王立ちした。

イトゥクが立ち止まって、振り向いた。


「でも、お前といても軽くはならない」


そう言って、走り出した。


「待ってよ!」


俺もあとを追いかける。いきなりハイヒールでこけそうになる。こんなものを履いて走ったイトゥクはすごい。

だけどイトゥクは走るから、俺も走るしかない。何でこんな朝っぱらから人が多いんだよ。恥ずかしくてどうにかなりそうだ。

ダウンコートが暑くなってきた。まだ追って来るのかこちらを確認したイトゥクがスピードを上げた。舌打ちしてヒールを脱ぐ。こんなんで走れるか。


「待って下さい!」


「来るなって!」


スーツ姿でイトゥクは容赦なく走る。俺も全力で走る。
薄いストッキングは多分足の裏が破れている。このワンピースサイズ合ってないだろ。裾が裂けた。
入念にピンで止められたかつらもずれてくる。もう取りたいのに、今それに手をかけたら、まかれるのが分かるから、手を出せない。


「俺、会社なんだよ!」


「知ってます!」


通勤途中のサラリーマンを何人も追い越している。
目を見開いて、飯屋の親父が店を開ける手を止めている。
反対側で女子高生が携帯電話で俺を撮影し出した。
俺に似たOLが汚いものでも見るように脇に寄る横を走り抜ける。
大通りに出られたら、俺はそのまま車に飛び込みたいくらいの恥だ。陽気な明るい朝に、ストッキングからすね毛出して、全力疾走するなんて。かつらが取れかけて、頭が分裂したみたいになって気持ち悪い。

でも飛び立つスズメの群れを抜けて、大通りに出る前に、俺はその肩をひっつかんだ。

バランスを崩したイトゥクが道路に倒れて尻もちをつく。俺は持っていたハイヒールを落として肩で息をしながら、同じく肩で息をするイトゥクを、見下ろした。苦しくて、短いスカートから出た膝に手を置いて、逃がさないように見据えて声を出した。


「俺がっ」


くそっ、邪魔だ。かつらを投げた。長い黒髪が道路をスライディングする。茶色の俺の地毛にまだついていたピンを気にしながら取ったのに、痛かった。
投げられたかつらを目で追ってから、また見上げられる。


「あのっ、俺が」


はあはあ、と口を開けて、呆然と見てくる。その可愛い目に向かって荒い息で言う。


「あなたの父親になります」


俺の言葉に表情を変えずに、後ろに手を突いたまま、


「何言ってんだ、お前」


と、馬鹿にしたように呟かれた。


「俺が、養いますよ。何なら俺の養子になって下さい」


イトゥクが段々と呼吸を落ち着かせて、全て自前の顏の、汗ばんだ眉間を寄せる。


「馬鹿だろ」


そう吐いて横を向かれた。こっちも呼吸が整ってくる。汗はすごい。


「俺、就職やめました」


「は?」


再び顔を向けられた。やっぱり綺麗だった。


「お前言ってることと、やってることが」


「俺、理系なんです」


姿勢を直しながら、顔全体の汗を拭った。何か塗られていているから、ぬるぬるした。


「蹴った会社にはもう就職できないけど、大学院に入ります」


落ち着いたイトゥクが、何も言わずに深呼吸して、見守っている。


「スポンサーがつくような研究が出来れば良いし、出来なくても研究職なら、院卒の方が給料良くなるから。俺、卒論も学部で最優秀で提出出来たし、修士取ったら給料だけで企業決めます。だから二年は待ってもらうことになるけど、でも」


養います。と言った俺に、自前の目がわなわなと揺れて、何も描かれていない眉をひそめてから、視線をそらした。


「俺は、養って欲しいなんて」


「それでも、その魔法が解けないなら」


遮った俺の言葉で、もう一度こちらを見た相手を覗き込んで、体を屈めた。


「これから勉強し直して、学部変更して、それを直す治療を、俺がしてあげますよ」


と言って、何か塗られた口で、俺はにっと微笑んだ。


まるで、悪い夢からさめたみたいに半円の目蓋が瞬いて、奥の瞳が濡れてきた。そして、一粒ころんとこぼれ落ちたと思ったら、イトゥクは何事もなかったように、頭を振って、立ち上がった。


「俺には母親がいるんだよ」


そう言って、合わせて姿勢をのばした俺と向き合った。


「もう、遅刻じゃん」


何も言えない俺の前で、腕時計を見る。それから、道路の脇に目をやって、歩いてそこに拡がったかつらを取って来た。


「ほら。これ洗うの面倒くさいからな」


無言で、それを受け取った。

次の瞬間、体を強張らせた。スーツの袖が俺の首元にあたって、イトゥクに抱きつかれていた。

慌てて、かつらを持った手で、抱き締め返す。


「キュヒョン。お前に抱き締められるのは、嫌じゃなかったよ」


耳元でイトゥクが呟いた。俺は腕に力を込めたけど、「じゃあな」と言って、体を離された。自分の腕を完全に戻せないまま、別れの口調っぽいのが悲しくて、つぐんでいる口を曲げて、綺麗な顔を見つめた。艶々した唇が開いた。


「洗面台にメイク落としあるから、部屋の暗証番号あとで連絡する」


良く開いた二重の目をもっと開けた俺を見て、その口の横がぽこっとへこんだ。

みとれていた俺の足元のバッグを拾い上げて、「今度は、お前の好きな映画でも良いから」とそのまま、微笑みながらイトゥクは、地下鉄の入口まで、走って行った。

長い髪を垂らしたかつら片手に、破れたストッキングとワンピースの俺は、その軽快に走る後ろ姿を、見えなくなっても、見送っていた。


「で」


と、言って、親友が続けた。


「それで俺は、来年の今頃までにはどうにかしようと思ってる」


桜の咲きはじめた校内のベンチで、俺は隣に向いた。


「とりあえず、何でそこから始めたのか全然分かんなかったけど、お前が俺に、バイト先の男が好きだと言うことを、伝えるつもりがないということは分かった」


と、言うとチャンミンは黙ったから、俺はニットの袖を上げて、横に置いていたコンビニのスープの残りをスプーンで掬って飲んだ。ちょっと跳ねたし、冷めていたけど、美味かった。


「先輩!」


向こうから、つきものが落ちたように晴れやかな顔をした後輩が走ってきた。


「入社式お疲れ様です」


薄いトレーナーにジャケットを着たミノが空いていた隣に座った。心なしか鼻息が荒い。


「うん」


チャンミンが喋った。


「キュヒョン先輩も来月にはいなくなるんですね」


遠くに見える正門の桜の木を眺めて、ミノが言った。俺の大学院はここではなかった。


「あんまり寂しそうじゃないな」


俺は晴れ晴れした横顔を見つめた。


「いつでも会えますから。それに俺、今日、彼氏とキスとかえっちとか色々出来るかもしれないんですよ」


ミノが爽やかに微笑んで言った。


「お前は今、自分が何を言っているのか分かってるのか?」


表情を変えずに、俺はそのまま聞いた。


「あ、電話取ります。すいません」


俺の質問に答えないまま、後輩は申し訳なさそうに俺とチャンミンに会釈したあと、笑顔になって、かかってきた携帯電話で話しながら、長い脚で去って行った。


「俺」


そう言った親友に向いた。また前屈みになっている。


「好きな人が、いるかもしれないんだよね」


一体こいつは、いつになったらカミングアウトするつもりなのだろうと思いながら、俺は持っていた残りのスープを「そう……」と言って飲み干した。



――運命の相手に出会う確率を計算した数学者がいる。



その方程式は、宇宙の星の数から出発するのだから、俺達の住むここに来るまでには、かなりの可能性がそぎ落とされるのは容易に想像つくだろう。


0.01%どころじゃない。そんなものもすぐに分かる。


じゃあ、今まで異性にしか興味なかった人間が、同性を好きになる確率はどうだろうか。


俺達は今、その確率の中にいる。


ならその相手が、女だと思って声をかけた女装した男だった条件を加えると、どうだろう。


それは、運命の相手に出会う確率に負けない位の低さだ。


その二人が恋におちる可能性は、本当に限りなく0に等しくて、そんな貴重な恋こそ運命みたいなものだし、そんな二人が出会ったことの方が、よっぽど、魔法みたいだと思わない?


「いつ来たの?」


「さっきです」


俺は、飲んでいたオレンジジュースをテーブルに置いた。


「そう。俺アイスコーヒーにしたよ」


と、その手の番号札がテーブルに置かれる間もなく、店員がコーヒーのグラスを持って来る。
テーブルには、まだ並々と入った俺のオレンジジュースと、アイスコーヒーのグラスが並んだ。


「ここで何か食べてく?」


そして、俺の正面に座る。切りたての明るい短髪が、座った拍子にさらりとした。スーツの袖から出た手で、イトゥクがストローを摘まんだ。何も塗られていなくても、艶々した唇が吸い込んでいく。


「それもいいですけど、映画館でホットドック食べたいです」


「いいね」


「それから、あそこで牡蠣のスープはもう終わりかな」


俺の独り言に、イトゥクは可笑しそうに肩を震わせた。その口の横がへこむのを見ると、俺は着ていたニットが暑く感じる。


「じゃあ行こうか」


飲み終えたイトゥクが立ち上がった。先に飲み終えていた俺も立った。隣に行くと、灰色のスーツの袖から出た手を掴んで指を絡ませながら、ちょこっとだけイトゥクより前を歩いて、店を出た。


ねえ、イトゥク。


そう、思わない?











『Magic』おわり






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